この文章は昔、塩見岳(3047m)に厳冬期に行った時に私が指導した内容を後輩がまとめてくれたモノを、私が超初心者向けに書き直したものです。従って私個人の主観も多く含まれており、各自の責任で自分に合う技術であれば実践するのも良いかと思います。
(基本Wストックと6本爪アイゼンで行ける範囲の山を想定した内容です。)
●アイゼン無しの歩行① 基本と緩斜面
雪上歩行の基本は無雪期と同じで、しっかり自分の足で雪面を捕らえることです。これはつぼ足でもアイゼンでも変わりません。
確かにアイゼンを使用すると、ある程度は歩行技術の未熟さをカバーはしてくれますが、個人的にはアイゼン無しでの歩行技術を完全にマスターすることが大切だと思っています。
ストックと、2本の足のどれかに荷重している状態を保ちます。但しストックに荷重をかけるのではなく、自分の足でしっかり立ち、ストックはバランスを取るぐらいと思って下さい。
滑りにくい歩き方の基本は静移動、静荷重ですが、踏み出すときにしっかりと体重移動することが大切です。踏み出した足に体重移動することを常に意識してください。
緩やかな斜面やトレースの上を歩くときは、靴底全体を雪面にのせます。
これをフラットフィッティングといいます。ポイントは、フラットに足を置くときも雪面を靴底全体で押しつけるようにしっかり踏むことです。しっかり体重がのれば、写真のように踏み跡がつくはずです。
★トレース泥棒の裏技
すでにあるステップを使うときには、既存のステップより数センチ前に足を置きましょう。後ろに置くと踵の部分がステップよりはみ出して不安定になり、結果的にステップを崩すことになります。無駄な体力を使うし、後ろを歩くメンバーも同様に疲れます。これは下りも同様です(下りでは踵をステップより少し手前に置きます)
●アイゼン無しの歩行② 急斜面でのキックステップ
傾斜が急になりフラットフィッティングでは滑るようなときは、雪面を爪先で蹴りこみます。これをキックステップといいます。
ポイントは、1回目でしっかり蹴り込むことです。よく何度もキックを繰り返す人がいますが、あれはほとんど意味がありません。靴の裏にはビブラム(ギザギザのこと)があり、これが雪面を捕えれば良いので、過剰な階段(ステップ)は必要ありません。
もう1つのポイントは、膝を中心に雪面に対し水平に蹴り込むことです。踵が上がり過ぎたり下がり過ぎていては、安定して足を置くことができません。
下りでは登りよりさらに小股で、踵からできるだけ真下に向けて蹴り込みます。写真は雪が深すぎて分かりにくいですが、この時も雪面に対し出来るだけ水平に蹴りこみことが重要になります。
特につま先が上がり気味で前方向に蹴り込むと重心が後になってしまい、スリップの原因となりますので十分に注意しましょう。
次回は、アイゼンを着けての歩行技術について書くようにします。