目指せ南アルプス塩見岳(3047m)①

この文章は、山岳会の冬合宿(年末の厳冬期)で塩見岳を目指した際に私が色々行動中に指導した内容を後輩が纏めてくれたモノです。
内容は歩行技術に絞り、実際の塩見岳をたどったコースで説明してあります。また厳冬期の南アの3000mの山ですから、必ずアイゼン12本爪とピッケルを使用という前提で書いてありますが、一部の技術は低山の雪山でも応用できます。
行程(文章)が長いので、何回かに分けて書きます。何かのお役に立てば幸いです。

1.塩川小屋~三伏峠 (標高:約1300~2600m)


まず、雪上歩行の基本は二点支持です。これはつぼ足でもアイゼンでも変わりません。ピッケルと2本の足のどれかに荷重している状態を保ちます。滑りにくい歩き方は基本となる静移動、静荷重ですが、踏み出すときにしっかりと体重移動することが大切です。
よく、歩くときに左右の肩が上下する人がいますよね。あそこまでは極端にしても、踏み出した足に体重移動することを常に意識してください。
ピッケルの場合は持ち方の基本は、登りも下りもピックは後ろ向きです。ただ、一部の技術書にピックを前に持つと書いてあるものもありますが(すぐにピックで雪面を打ち止められる可能性があるため)、基本的には滑落姿勢が取りやすいピックが後ろ向きの持ち方が基本です。

【登山靴での登り:フラットフィッティング】 
今日は樹林帯をひたすら登ります。 今回のようなメジャーな山域は、年末年始ともなればいくつものパーティーが入山します。そのため降雪直後の先頭パーティーでなければ、人がつけてくれたトレースをたどって歩くことが多いです。緩やかな斜面やトレースの上を歩くときは、靴底全体を雪面にのせます。これをフラットフィッティングといいます。ポイントは、フラットに足を置くときも雪面を靴底全体で押しつけるようにしっかり踏むことです。

★トレース泥棒の裏技
すでにあるステップを使うときには、既存のステップより数センチ前に足を置きましょう。後ろに置くとかかとの部分がステップよりはみ出して不安定になり、結果的にステップを崩すことになります。無駄な体力を使うし、後ろを歩くメンバーも同様に疲れます。これは下りも同様です(下りでは踵をステップより少し手前に置きます)。

【登山靴での登り:キックステップ】
傾斜が急になりフラットフィッティングでは滑るようなときは、雪面を爪先で蹴りこみます。これをキックステップといいます。ポイントは一回目でしっかり蹴り込むことです。よく何度もキックを繰り返す人がいますが、あれはほとんど意味がありません。靴の裏にはビブラム(ギザギザのこと)があり、これが雪面を捕えれば良いので過剰な階段(ステップ)は必要ありません。

次回②に続く